2025/03/07
こんにちは!
世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。
今日ご紹介するのは「腎性貧血」についてです。
犬猫の腎性貧血とは?
【腎性貧血(じんせいひんけつ)】とは、【慢性腎臓病(CKD)】などで腎臓の機能が低下し、赤血球が十分に作られなくなることで起こる貧血です。
貧血とは、赤血球やヘモグロビン(酸素を運ぶ成分)が減少し、体に十分な酸素が行き渡らなくなる状態のことを指します。
腎臓が正常に働いていれば、赤血球を作るホルモン「エリスロポエチン(EPO)」が分泌されますが、腎臓病が進行するとEPOの分泌が減り、骨髄での赤血球の産生が低下してしまいます。
【腎性貧血】は特に【慢性腎臓病の中~末期(ステージ3~4)】で起こりやすく、進行すると生活の質(QOL)が大きく低下します。
なぜ腎臓病で貧血が起こるのか?
腎臓病による貧血には、以下のような原因が関係しています。
1.エリスロポエチン(EPO)の不足
腎臓の役割のひとつに、エリスロポエチン(EPO)というホルモンの分泌があります。
EPOは骨髄に働きかけ、赤血球を作るように指示を出します。
しかし、【慢性腎臓病(CKD)】が進行すると腎臓の機能が低下し、EPOの分泌量が減少します。
それにより赤血球の産生が減少し、貧血を引き起こしてしまいます。
2.赤血球の寿命が短くなる
【慢性腎臓病】は、体内の老廃物(尿毒素)が十分に排出されなくなり、血液中に蓄積します。
この尿毒素は赤血球を傷つけ、通常よりも寿命を短くしてしまうことがあります。
また、腎臓病の犬猫は脱水しやすいため、血液の粘度が高まり、赤血球がダメージを受けやすくなります。
3.栄養不足(鉄・ビタミン・タンパク質不足)
赤血球を作るためには、鉄・ビタミンB12・葉酸・タンパク質が必要ですが、腎臓病の進行とともに食欲不振になり、栄養が不足することがあります。
特に鉄が不足すると赤血球の材料が不足し、さらに貧血が悪化します。
腎性貧血の症状
腎性貧血が進行すると、以下のような症状が現れます。
- 元気がなくなる、動きたがらない
- すぐに疲れる、寝ている時間が増える
- 食欲不振(酸素が足りず、代謝が低下)
- 歯茎や舌の色が白っぽくなる(通常はピンク色)
- 呼吸が荒くなる(酸素不足のため)
- 心拍数が上がる(動悸)
- 体温低下(末期の場合)
初期では症状が軽いため気づきにくいですが、貧血が進むと明らかに元気がなくなり、食欲が落ちることが多いです。
診断方法
腎性貧血の診断には、以下の検査が行われます。
1.血液検査
- ヘマトクリット(HCT):赤血球の割合を示す指標(30%以下で貧血)
- ヘモグロビン(Hb):酸素を運ぶたんぱく質(10g/dL以下で貧血の可能性)
- 赤血球数(RBC):基準値より低下していると貧血の疑い
- 鉄、フェリチン:鉄欠乏の有無を確認
2.腎機能検査
- BUN(尿素窒素)、クレアチニン、SDMA:腎機能の状態を確認
- 電解質バランス(ナトリウム・カリウムなど):腎臓病の影響を評価
腎性貧血の治療法
3.エリスロポエチン製剤(EPO注射)
腎性貧血の最も有効な治療法は、エリスロポエチン(EPO)製剤の投与です。
- EPO製剤を使用
- 週1回程度の注射で赤血球を増やす
- 投与後1~2週間で効果が出る
ただし、長期間の使用で抗体ができて効かなくなるリスクがあるため、慎重に経過観察が必要です。
2.鉄分の補給(鉄剤投与)
赤血球の材料となる鉄が不足している場合、鉄剤を投与します。
3.腎臓病の管理(食事療法・点滴)
- 腎臓病用の療法食(低タンパク・高カロリー・鉄分強化)
- 皮下補液(点滴)で脱水を防ぐ
- リン制限(腎機能の悪化を抑える)
まとめ
✅ 腎性貧血は、慢性腎臓病の進行によって起こる貧血
✅ 主な原因はエリスロポエチン(EPO)不足と赤血球の寿命短縮
✅ 症状は元気低下、食欲不振、歯茎の蒼白、呼吸の乱れなど
✅ 治療はEPO注射、鉄剤、食事管理、脱水対策が重要
【腎性貧血】は【慢性腎臓病】が進行すると避けられない合併症の一つですが、適切な管理を行うことで犬猫のQOLを維持できます。
定期的な血液検査で早期発見・早期治療を心がけましょう!
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けいこくの森動物病院 世田谷犬猫歯科
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