実はチワワに多い病気、心原性肺水腫について

2025/03/09

こんにちは！世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。

今回はチワワに多い心臓の病気の話です。

チワワはその小柄な体格と愛らしい外見で非常に人気のある犬種ですが、高齢になると心臓病や肺に関わる疾患が発症しやすくなります。特に「心原性肺水腫（しんげんせいはいすいしゅ）」は、進行すると生命に関わる状態に至ることがあるため、早期の発見と適切な治療が非常に重要です。本記事では、チワワにおける心原性肺水腫の発症原因や症状、診断方法、治療法、予防法について解説します。

1. 心原性肺水腫とは？

心原性肺水腫は、心臓の機能不全が原因で肺に水分がたまる病気です。心臓が効率的に血液を送り出せなくなると、血液が肺にうっ滞し、その結果、血管壁から水分が肺に漏れ出してしまいます。肺にたまった水分は酸素交換を妨げ、呼吸困難を引き起こします。この病気は、急性と慢性に分類され、急性の場合は症状が急速に悪化するため、即時の対応が必要です。慢性の場合は、症状が徐々に進行し、最終的に呼吸困難が顕著になります。

2. チワワが心原性肺水腫になりやすい理由

チワワは、小型犬でありながら心臓疾患を発症しやすい傾向があります。その理由として、以下の要因が挙げられます。

僧帽弁疾患: チワワに多く見られる心臓病の一つは僧帽弁疾患です。僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にあり、血液の逆流を防ぐ役割を果たしています。この弁が加齢や病的な変化によって正常に機能しなくなると、血液が左心房に逆流し、その圧力が肺に伝わります。この圧力の影響で肺に水分がたまり、肺水腫を引き起こすのです。
加齢による心臓の変化: チワワは比較的長寿命な犬種であり、加齢とともに心臓の機能が低下します。特に小型犬は、高齢になると心臓の弁や筋肉が柔軟性を失い、血液の循環が悪化します。この変化が心原性肺水腫を引き起こす原因となります。
遺伝的素因: チワワには、心臓病にかかりやすい遺伝的要因を持つ個体が多く見られます。親犬や血統に心臓疾患がある場合、子犬にもその影響が現れることがあります。このため、若いチワワでも心臓疾患を発症することがあります。

3. 心原性肺水腫の症状

心原性肺水腫の症状は、病気の進行具合や急性・慢性のタイプによって異なりますが、主に以下の症状が見られます。

呼吸困難（喘鳴）: 肺に水がたまることで、犬は呼吸が苦しくなり、呼吸が浅く速くなることがあります。特に夜間や安静時に呼吸が荒くなることが多いです。
咳: 乾いた咳が頻繁に出るようになります。進行すると、湿った咳が出ることもあります。特に夜間や休息中に咳が悪化することがよく見られます。
元気消失: 呼吸困難により、犬は運動を避けるようになり、普段よりも元気がなくなることがあります。特に散歩や遊びの時間が減るなど、活発さがなくなる場合があります。
食欲不振: 呼吸が苦しくなると、犬が食事を摂りたがらなくなることがあります。食欲不振が続くと体力が低下し、さらに症状が悪化することがあります。
チアノーゼ（青紫色の舌）: 酸素が十分に供給されないと、舌や歯茎が青紫色になることがあります。これは非常に危険なサインで、緊急の治療が必要です。

4. 診断方法

心原性肺水腫の診断は、獣医師による詳細な評価を必要とします。診断には以下の方法が使われます。

聴診: 獣医師は犬の胸部を聴診し、異常な心音や肺音を確認します。心臓疾患が疑われる場合、雑音や異常音が聞こえることがあります。
X線検査: 胸部X線を使用して、肺に水分がたまっているかどうかを確認します。肺水腫が進行すると、X線画像で肺の影響が確認できます。
心エコー（超音波検査）: 心臓の状態を詳細に観察するために心エコーを使用します。特に、心臓の弁や心室の状態を確認し、疾患の原因を特定します。
血液検査: 一部のケースでは血液検査が行われ、心臓や肺に関連する異常があるかを調べることがあります。

5. 治療方法

心原性肺水腫の治療は、早期発見と適切な対応がカギとなります。治療方法には主に以下のアプローチがあります。

利尿剤: 肺にたまった水分を排出するために、利尿剤が使用されます。これにより、肺の水分量が減少し、呼吸が楽になります。
心臓の薬: 心臓の負担を減らし、血液循環を改善する薬が使用されます。これにより、心臓の機能がサポートされ、症状が緩和されます。
酸素療法: 呼吸が困難な場合、酸素を供給することで犬の酸素飽和度を維持し、呼吸の補助を行います。
外科的治療: 進行した心臓疾患が原因の場合、外科的な治療が必要となることがあります。手術を通じて、心臓の構造を改善することがありますが、これは重度のケースに限られます。

6. 予防と管理

心原性肺水腫を予防するためには、以下の管理が重要です。

定期的な健康診断: 高齢のチワワでは年に一度、健康診断を受けて心臓の状態をチェックすることが重要です。早期に異常を発見することで、進行を防ぐことができます。
運動管理: 適度な運動は心臓に良い影響を与えますが、過度な運動は心臓に負担をかけるため、運動量を調整することが必要です。
肥満予防: 適正体重を維持することで、心臓への負担を軽減できます。肥満は心臓に余分な負担をかけるため、食事管理が非常に大切です。
ストレス管理: ストレスを減らし、静かな環境を提供することで、心臓への負担を軽減できます。