2024/12/26
こんにちは!
世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。今回は乳腺の腫瘍についてお話します!
犬の乳腺にしこりを見つけた場合、多くの飼い主はその正体が何であるか、どのように対処すべきか不安になるでしょう。乳腺腫瘍は犬にとって一般的な病気の一つですが、早期発見と適切な対応が、治療結果に大きな影響を与えます。本記事では、犬の乳腺腫瘍について、病理、リスク要因、診断方法、治療法、予防法をファクトベースで詳しく解説し、飼い主の皆さんが愛犬の健康を守るための具体的な知識を提供します。
乳腺腫瘍とは?
犬の乳腺腫瘍は、乳腺(母乳を分泌する腺)の組織にできる腫瘍で、特に雌犬に多く見られます。乳腺腫瘍は、良性と悪性に分類されますが、腫瘍の性質(良性か悪性か)によって治療方針が大きく異なります。
良性腫瘍と悪性腫瘍
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良性腫瘍(線維腺腫)
良性腫瘍は比較的予後が良好で、早期に手術で取り除くことで完治することが多いです。腫瘍は一部の組織に限られ、転移は起こりません。 -
悪性腫瘍(乳腺癌)
悪性腫瘍は、腫瘍細胞が乳腺周囲や体の他の部分に転移する可能性があります。悪性の場合、転移先として最も多いのは肺です。転移を防ぐためには早期の発見と適切な治療が不可欠です。
乳腺腫瘍は、犬にとって非常に重要な疾患であり、しこりの存在を無視することは危険です。発症した場合の予後を改善するために、適切な診断と治療を受けることが大切です。
乳腺腫瘍のリスク要因
乳腺腫瘍の発生にはいくつかのリスク要因が関与しています。以下に、科学的な根拠に基づく主なリスク要因を挙げます。
1. 性別とホルモンの影響
乳腺腫瘍は雌犬に多く見られます。特にエストロゲンやプロゲステロンなど、ホルモンの影響を受けるためです。これらのホルモンが乳腺に作用し、腫瘍を引き起こす原因となることがあります。雄犬にもまれに発生しますが、女性に比べてはるかに少ないです。
2. 年齢
乳腺腫瘍は、特に7歳以上の高齢犬に多く発生します。年齢を重ねることで、腫瘍が発生するリスクは増加します。特に10歳以上の犬では腫瘍の発生率が顕著に高くなります。
3. 避妊手術
避妊手術を受けていない雌犬は、ホルモンの影響を長期間受け続けるため、乳腺腫瘍のリスクが高くなります。実際、避妊手術を受けた犬では、乳腺腫瘍の発症率が大幅に減少することが多くの研究で確認されています。生後6ヶ月未満で避妊手術を受けた犬は、乳腺腫瘍の発生リスクがほぼゼロになります。
4. 遺伝的要因
犬種ごとに乳腺腫瘍の発生率には差があります。特にダックスフンド、シーズー、ポメラニアン、ビーグルなど、特定の犬種では乳腺腫瘍が発生しやすい傾向があります。また、血統においても遺伝的素因が関与している可能性があります。
5. 肥満
肥満の犬は、ホルモンバランスに影響を及ぼすことがあり、乳腺腫瘍のリスクを高めるとされています。過剰な体脂肪がホルモンの代謝に影響を与え、腫瘍の形成を促進する可能性があります。
乳腺腫瘍の症状
乳腺腫瘍が発生した場合、以下のような症状が現れます。これらの兆候に気づいたら、すぐに動物病院での診察を受けることが推奨されます。
1. しこり
乳腺に硬いしこりが触れることが最も一般的な症状です。しこりは初期段階では小さく感じられることもありますが、時間と共に大きくなることがあります。
2. 乳腺の腫れや赤み
腫瘍が炎症を引き起こす場合、乳腺が腫れたり赤みを帯びたりすることがあります。炎症がひどくなると、乳腺周囲が熱を持ち、触ると痛みを感じることがあります。
3. 分泌物
乳腺から血液や膿が出ることがあります。分泌物が続く場合や異常な色や量が確認される場合は、悪性の可能性が高いため、早急に受診が必要です。
4. 食欲不振・元気消失
悪性腫瘍の場合、全身に影響を与え、食欲不振や元気の低下、体重減少が見られることがあります。これらの症状がある場合は、早期の診断と治療が求められます。
乳腺腫瘍の診断方法
乳腺腫瘍の診断は、専門的な検査によって確定されます。以下は、一般的な診断方法です。
1. 触診
獣医師による乳腺の触診が最初のステップです。しこりの位置、大きさ、硬さを確認し、悪性の兆候(不規則な形状や硬さ)を探ります。
2. 超音波検査
腫瘍の内部構造を調べるため、超音波検査が行われます。良性腫瘍は一般的に均一な構造を持つのに対し、悪性腫瘍は不均一で、内部に液体が貯まっていることがあります。
3. 針生検(細胞診)
針を使って腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で検査します。これにより、腫瘍が良性か悪性か、また転移の可能性があるかを判断します。
4. X線検査
悪性腫瘍が転移しているかを確認するため、X線を使用して肺やリンパ節の状態を調べることがあります。
乳腺腫瘍の治療方法
治療法は腫瘍が良性か悪性か、進行度に応じて異なります。一般的な治療法は以下の通りです。
1. 外科手術
乳腺腫瘍の最も効果的な治療法は手術です。良性腫瘍は手術で完全に除去できます。悪性腫瘍の場合、腫瘍の広がりに応じて、部分的な切除や周囲のリンパ節の切除が行われることがあります。
2. 化学療法
悪性腫瘍が転移している場合、化学療法が行われることがあります。化学療法は、腫瘍の進行を遅らせ、転移を抑制することが目的です。
3. ホルモン療法
ホルモンに依存した腫瘍(ホルモン受容体陽性腫瘍)には、ホルモン療法が効果的なことがあります。エストロゲンやプロゲステロンの作用を抑える薬が使用されることがあります。
乳腺腫瘍の予防
乳腺腫瘍の最も効果的な予防法は避妊手術です。特に生後6ヶ月未満で避妊手術を受けた犬では、乳腺腫瘍の発生リスクが著しく低減します。また、定期的に愛犬の乳腺をチェックし、しこりや異常を早期に発見することも重要です。
まとめ
犬の乳腺腫瘍は、早期発見と適切な治療が予後に大きな影響を与えます。飼い主として、定期的な健康チェックを行い、異常を早期に発見することが愛犬の命を守る鍵となります。避妊手術を行うことで乳腺腫瘍のリスクを低減できるため、予防的な措置も重要です。愛犬の健康を守るために、日々のケアと早期対応を心がけましょう。
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