2024/10/02
こんにちは!世田谷区けいこくの森動物病院です。
生まれたばかりの仔犬や仔猫が哺乳後や食事後にくしゃみや咳をする場合、先天的な異常が隠れているかもしれません。
その中には口蓋裂(こうがいれつ)と呼ばれる異常が知られています。
犬と猫の口蓋裂は、生まれつきの異常で、口の中の上あごにある「口蓋(こうがい)」と呼ばれる部分が完全に閉じない状態のことを指します。この状態により、口の中と鼻腔が繋がってしまい、食事や水を飲んだ際に食べ物や液体が鼻から逆流してしまう問題が発生します。口蓋裂は動物にとって大きな影響を与え、特に若齢の犬や猫では、命に関わることもあります。本稿では、犬と猫の口蓋裂について、その原因、症状、治療法、そしてご家族ができる対策について解説します。
口蓋裂とは?
口蓋裂は、口の中の上部に位置する口蓋という部分が、正常に発達しないことで発生します。通常、胎児の発達中に口蓋が左右から中央に向かって閉じ、口の中と鼻腔を分ける構造が形成されます。しかし、何らかの原因でこの過程が途中で止まってしまうと、口蓋が完全に閉じずに隙間ができてしまいます。この隙間が口蓋裂です。
口蓋裂には2種類あります。
- 一次口蓋裂(唇裂):唇部分が裂ける形で生じる口蓋裂です。外見的にわかりやすく、見た目に特徴的な裂け目が確認されることがあります。
- 二次口蓋裂:上あごの奥にある口蓋部分が裂ける形で生じ、口の中と鼻腔が直接繋がる状態になります。これは見た目には確認しづらいですが、症状から診断されます。
原因
口蓋裂の原因は、遺伝的要因と環境要因の両方が関与しています。
- 遺伝的要因:特定の犬種や猫種において、口蓋裂が発生しやすいことが知られています。特に犬では、ブルドッグやシーズーなどの短頭種が口蓋裂を発症しやすい傾向があります。猫では、ペルシャやスコティッシュフォールドなどがリスクが高いとされています。
- 環境要因:妊娠中の母体の健康状態や外部環境も影響を与えることがあります。母親が妊娠中に感染症や栄養不足、特定の薬剤の摂取などが影響し、胎児の発達に異常が生じることがあります。
口蓋裂の症状
口蓋裂を持つ動物では、以下のような症状が見られることがあります。
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哺乳困難:特に子犬や子猫では、ミルクを飲む際に鼻から液体が出てしまうことがあります。これは、口腔と鼻腔が繋がっているため、ミルクが鼻に逆流してしまうためです。このため、栄養が十分に摂取できず、体重が増えない、もしくは衰弱することがあります。
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くしゃみや鼻水:食べ物や水が鼻腔に入るため、頻繁なくしゃみや鼻水が見られることがあります。これにより、慢性的な鼻炎や感染症を引き起こすリスクが高まります。
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呼吸困難:鼻腔内に食べ物や水が入り込むことで、呼吸がしづらくなり、咳をしたり、呼吸音が異常になることがあります。
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体重増加不良:十分に食事が摂取できないため、子犬や子猫の成長が遅れる、または体重が思うように増えないことがあります。
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食べ物が鼻に逆流する:固形物を食べるようになると、食べ物が鼻腔に入り込むことがあり、これによりさらに症状が悪化します。
診断
口蓋裂の診断は、主に視診によって行われます。一次口蓋裂の場合は、唇や鼻先に明らかな裂け目が見られるため、簡単に発見できます。一方で、二次口蓋裂の場合は、口の中をよく観察しなければならないため、獣医師による詳細な検査が必要です。場合によっては、麻酔をかけた状態で口内を詳しく確認することもあります。
治療法
口蓋裂は自然に治癒することはないため、治療には手術が必要です。手術により、裂けている部分を縫合して口腔と鼻腔を分けることが目標となります。
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手術による治療:口蓋裂を修復するための外科手術は、動物の状態によって異なりますが、一般的には口蓋を縫い合わせる形で行われます。手術後は、一定期間のケアが必要であり、特に食事の管理が重要です。柔らかい食事を与えたり、鼻腔への感染を防ぐための処置が求められます。
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一時的な対策:手術が行われるまでの間、哺乳瓶や特別な食器を使用して食事をサポートすることが重要です。通常の哺乳ではうまく飲めない場合、チューブフィーディング(胃管栄養)を行うこともあります。
予後
口蓋裂を持つ動物の予後は、早期の診断と適切な治療によって大きく改善されます。手術によって口蓋裂が修復されると、多くの動物は正常な生活を送ることができます。ただし、手術が成功しても、鼻腔や口腔内の感染症には引き続き注意が必要です。また、手術後のケアも重要で、特に食事管理と清潔な環境の維持が必要です。
飼い主ができる対策
口蓋裂のある動物を飼育する際には、特に以下の点に注意することが大切です。
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食事管理:手術前後は特に、柔らかい食事を与えることや、鼻腔に食べ物が入らないように工夫することが重要です。手術後は、獣医師の指示に従い、固形物やドライフードを避ける期間を守る必要があります。
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清潔な環境:口や鼻の感染を防ぐために、常に清潔な環境を維持することが大切です。特に術後は、感染症を避けるためのケアが求められます。
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定期的な健康チェック:術後の経過観察や、成長に応じた健康チェックは欠かせません。何か異常が見られた場合は、すぐに動物病院に相談することが必要です。
まとめ
犬や猫の口蓋裂は、早期の診断と適切な治療が大切な疾患です。特に子犬や子猫の場合、哺乳や食事に大きな支障をきたすため、飼い主は早期に異変を察知し、獣医師の指導のもとで適切な対処を行うことが求められます。手術による修復が可能であり、多くの動物は治療後に正常な生活を取り戻すことができますが、術後のケアや食事管理には十分な注意が必要です。
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