2024/09/11
皆さんこんにちは、世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。
今回ご紹介するのは、甲状腺機能低下症という病気についてです。
「最近元気がないけど、もう高齢だから…」と年のせいだと思っていたら、実は病気が隠れていた!なんてこともあります。高齢のわんちゃんに多い病気なので、加齢による変化と見分けがつきづらいことがあります。
1.甲状腺機能低下症について
甲状腺機能低下症は、犬の甲状腺が正常に機能せず、必要なホルモンを十分に生成できない状態を指します。甲状腺は、首の前側に位置する小さな腺で、体の代謝を調整するホルモン(チロキシンとトリヨードチロニン)を分泌します。これらのホルモンは、体内の代謝レベル、体温調節、心臓機能、消化、皮膚と被毛の健康など、様々な体の機能をサポートします。
2. 甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症の主な原因は、自己免疫性甲状腺炎(リンパ球性甲状腺炎)です。これは、犬の免疫システムが誤って自分自身の甲状腺組織を攻撃し、甲状腺を破壊する疾患です。また、遺伝的要因や加齢による変化も関与していることが知られています。まれに、腫瘍や特定の薬物による影響も原因となることがあります。
3. 甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたり、一般的には次のような症状があらわれます
①体重増加:特に食欲が変わらないにもかかわらず、体重が増加することがあります。
②皮膚と被毛の変化:毛が薄くなったり、乾燥したり、脱毛が見られることがあります。特に背中や尾の部分に現れやすいです。
③活動性の低下:怠けがちになり、活動量が減少することがあります。
④寒がり:他のわんちゃんよりも寒がりになり、暖かい場所を好むようになります。
⑤皮膚の異常:皮膚が黒ずんだり、厚くなることがあります。
⑥心血管系の問題:まれに心拍数の低下やその他の心臓の問題が発生することがあります。
4. 診断方法
甲状腺機能低下症の診断には、いくつかの検査が行われます。最も一般的なのは血液検査で、甲状腺ホルモンのレベルを測定します。具体的には、総チロキシン(T4)や遊離チロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルをチェックします。異常な結果が出た場合、さらなる詳しい検査が行われることがあります。
5. 治療法
甲状腺機能低下症は、一般的にはホルモン補充療法で治療されます。人工的な甲状腺ホルモンであるレボチロキシンを投与することで、欠乏しているホルモンを補います。この治療は通常、生涯にわたって継続する必要があります。適切な投薬量を決定するために、定期的な血液検査が必要です。
6. 日常生活での管理
甲状腺機能低下症の犬は、適切な治療と管理が行われれば、通常の生活を送ることができます。以下の点に注意することが重要です。
・定期的な獣医師の診察:治療の効果を確認し、必要に応じて投薬量を調整するために、定期的な血液検査と診察が必要です。
・ 適切な食事管理:体重管理が重要です。獣医師の指導に従って、適切な食事と運動を行うことが推奨されます。
・症状の観察:皮膚や被毛の状態、活動性、体重の変化など、日常の中でわんちゃんの状態を観察し、異常があれば早めに獣医師に相談することが大切です。
7. 予防と早期発見の重要性
甲状腺機能低下症は完全に予防することは難しいですが、早期発見と治療が重要です。定期的な健康チェックや血液検査を受けることで、早期に異常を発見し、適切な治療を開始することができます。また、遺伝的要因が関与する場合、繁殖計画においても注意が必要です。
まとめ
犬の甲状腺機能低下症は、ホルモンの欠乏により様々な症状を引き起こす疾患です。適切な治療と管理により、愛犬は健康的な生活を送ることができます。飼い主様としては、症状に気づいたら早めに獣医師に相談し、定期的な健康チェックを怠らないことが重要です。健康な毎日をサポートするために、獣医と協力しながら愛犬のケアを行いましょう。
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