2024/07/08
こんにちは！
世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。 今回は犬と猫の「デスメ膜瘤」について紹介します。
デスメ膜瘤とは？
デスメ膜瘤は、眼の角膜の疾患の一種です。角膜は眼の最も外側にある透明な膜で、光を通して視覚に関わったり、眼の保護に関わる重要な役割を果たしています。デスメ膜瘤は、角膜の深層にあるデスメ膜が突出する状態を指し、しばしば角膜潰瘍の重度の段階として発生します。この状態は視覚に大きな影響を与えるだけでなく、痛みを伴い、適切な治療を行わない場合は角膜穿孔に至り、視覚の喪失や眼球の喪失に繋がる可能性があります。
犬と猫のデスメ膜瘤の原因
デスメ膜瘤の主な原因は角膜潰瘍です。角膜潰瘍は、感染、外傷、異物、化学物質、乾燥（ドライアイ）、免疫関連疾患などによって引き起こされます。以下に、犬と猫における具体的な原因を示します。
外傷：犬や猫が自分の爪や他の動物、物により角膜を傷つけることがあります。特に猫は爪で自分の眼を傷つけやすく、犬は散歩中に草や枝で角膜を傷つけることがあります。
感染：細菌、ウイルス、真菌などが角膜に感染することで潰瘍を引き起こし、進行するとデスメ膜瘤になることがあります。特に猫のヘルペスウイルス感染は、角膜潰瘍の一般的な原因です。
乾燥：犬や猫がドライアイ（乾性角結膜炎）になると、角膜が乾燥して傷つきやすくなります。これはデスメ膜瘤のリスクを高めます。
免疫関連疾患：自己免疫疾患により、角膜の正常な細胞が破壊されることがあります。このような場合、角膜潰瘍が発生しやすくなります。
症状
デスメ膜瘤の初期段階では、角膜潰瘍の一般的な症状が見られます。以下のような症状が現れた場合は、早急に動物病院での診察が必要です。
眼の赤み：結膜の充血が見られます。
涙目：異常な涙の分泌が増加します。
眼の痛み：動物が眼をこする、または眼を閉じることが多くなります。
視覚障害：視力が低下し、動物が物にぶつかりやすくなります。
角膜の白濁：角膜が白く濁り、視覚が遮られます。 角膜潰瘍が進行すると、角膜の深部にあるデスメ膜が突出し、眼球の形状が変わることがあります。これにより、視力の喪失が進行し、さらに痛みが増します。
診断と治療
デスメ膜瘤の診断は、眼科検査を通じて行われます。以下のような方法が用いられます。
フルオレセイン染色試験：角膜潰瘍の存在を確認するために行われる試験です。フルオレセインという蛍光染料を角膜に滴下し、潰瘍がある部分が染色されることで確認します。デスメ膜自体は染色されない性質をもつためデスメ膜が露出しているか判定できます。
細菌培養および感受性試験：感染が疑われる場合、細菌の特定と適切な抗生物質の選定を行うために実施されることがあります。
眼圧検査：緑内障などの他の眼疾患を除外するために行われることがあります。
涙液量測定：ドライアイなどの体質がないか確認することがあります。
治療は、角膜潰瘍の進行度と原因によって異なりますが、一般的には以下のような方法が用いられます。
薬物療法：感染が原因の場合、抗生物質や抗ウイルス薬が処方されます。また、角膜の修復を促進するための点眼薬も使用されます。
外科的治療：デスメ膜瘤が重度である場合、外科的な介入が必要となります。一般的な方法としては、結膜フラップ手術や角膜移植が挙げられます。これにより、デスメ膜を保護し、角膜の再生を促進します。
保護用カラーの使用：動物が眼を擦らないようにエリザベスカラーを使用します。
予防
デスメ膜瘤を予防するためには、以下の点に注意することが重要です。
定期的な眼のチェック：特に外傷や感染が疑われる場合、早期に動物病院で診察を受けることが重要です。
適切な眼のケア：眼の周りを清潔に保ち、異物や汚れを取り除くことが大切です。
免疫力の維持：健康な生活習慣を維持し、免疫力を高めることで感染症のリスクを減らすことができます。
適切な環境管理：動物が安全に過ごせる環境を整え、外傷のリスクを減らすことが重要です。
まとめ
デスメ膜瘤は犬と猫にとって非常に深刻な眼の疾患です。早期の発見と適切な治療が視覚の保護に繋がります。動物の眼の異常を感じた場合は、速やかに病院での診察を受けることが大切です。また、日常的なケアを心掛けることで、デスメ膜瘤の発生リスクを減らすことができます。健康を守るために、常に注意を払いましょう。
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