犬の霰粒腫(さんりゅうしゅ)について
1. 霰粒腫とは
霰粒腫は、まぶたにあるマイボーム腺(脂腺)の慢性的な炎症によって形成される無痛性で非腫瘍性のしこりです。一般的に無害ですが、大きくなると視覚障害や強い炎症のリスクが増すため、適切な管理と治療が必要です。霰粒腫は犬と猫の両方に発生する可能性がありますが、犬においては特に一般的です。
2. 原因
霰粒腫の主な原因は、マイボーム腺の閉塞です。マイボーム腺は、まぶたの内側にあり、涙の蒸発を防ぐための脂質を分泌します。腺が詰まると、分泌物がたまり、炎症が起こり、しこりとなります。
以下が霰粒腫の主な原因です:
- マイボーム腺の閉塞:脂質の分泌がスムーズに行われない場合、腺が詰まりやすくなります。
- 眼瞼炎:まぶたの炎症があると、霰粒腫が発生しやすくなります。
- 免疫力の低下:ストレスや病気などで免疫力が低下すると、炎症が起こりやすくなります。
3. 症状
霰粒腫の初期症状としては、小さなしこりがまぶたに現れます。以下のような症状が見られることがあります:
- まぶたの腫れ:しこりが徐々に大きくなり、まぶたが腫れることがあります。
- 無痛性のしこり:触っても痛みを感じないことが多いです。
- 目の違和感:大きくなると、目に違和感を感じることがあります。
- 脂肪肉芽腫:破裂すると強い炎症から脂肪肉芽腫というさらなるしこりを形成する場合があります。
4. 診断
霰粒腫の診断は、視覚的な観察と触診によって行われます。動物病院では、獣医師がまぶたを調べ、しこりの位置や大きさを確認します。必要に応じて、細胞診を行うこともあります。細胞診では、しこりから細胞を採取し、顕微鏡で分析します。これにより、悪性の腫瘍との区別が可能です。
5. 治療法
霰粒腫の治療法は、しこりの大きさや症状の重さによって異なります。一般的な治療法には以下のものがあります:
5.1 保存療法
初期の霰粒腫や小さいしこりに対しては、保存療法が有効です。
- 温湿布:温湿布を1日数回、10分程度当てることで、血行を促進し、腫れを軽減させます。
- マッサージ:軽いマッサージで脂質の排出を促すことができます。ただし、強く押しすぎないよう注意が必要です。
5.2 切開と排膿処置
しこりが大きくなり、視覚に影響を与える場合や、保存療法で改善しない場合には、切開を加えて排膿させる処置を行うことがあります。
5.3 薬物療法
感染や炎症がひどい場合には、薬物療法が行われます。
- 抗生物質:二次感染を防ぐために、抗生物質が処方されることがあります。
- 抗炎症薬:炎症を抑えるために、ステロイドなどの抗炎症薬が使用されることがあります。
6. 予防
霰粒腫の予防には、日常的なケアが重要です。以下のポイントを参考にしてください:
- 定期的な目のチェック:まぶたや目の周りを定期的にチェックし、異常がないか確認します。
- 適切な目の清潔:目の周りを清潔に保ち、マイボーム腺の詰まりを防ぎます。
- 健康な生活習慣:バランスの取れた食事と適度な運動で、免疫力を高めます。
7. まとめ
霰粒腫は犬に発生することがある一般的な目の病気です。無痛性のしこりがまぶたにできることが特徴で、通常は無害ですが、大きくなると視覚に影響を与える可能性があります。早期発見と適切な治療が重要であり、保存療法や薬物療法、必要に応じて切開・排膿が行われます。日常的なケアと定期的なチェックを通じて、霰粒腫の予防に努めることが大切です。