1. 乳腺腫瘍とは?
乳腺腫瘍は、文字通り犬の乳腺組織に発生する腫瘍のことを指します。これは、乳腺細胞が異常に増殖することで形成されます。乳腺腫瘍には、良性と悪性(がん性)の二種類があり、その割合は50:50と言われています。犬の乳腺腫瘍は比較的一般的な病気で、特に中高齢の雌犬に多く見られます。
2. 発生原因
乳腺腫瘍の正確な原因は不明ですが、いくつかの要因が関与していると考えられています。ホルモンの影響が大きく、特にエストロゲンとプロゲステロンというホルモンが腫瘍の発生や成長に関与しています。未避妊の雌犬は避妊手術を受けた犬に比べて乳腺腫瘍のリスクが高いとされています。
3. リスク要因
- 避妊手術の有無: 避妊手術を受けていない犬は、乳腺腫瘍のリスクが高くなります。
- 年齢: 高齢の犬に多く見られます。特に7歳以上の犬で発生率が増加します。
- ホルモン: ホルモン療法を受けている犬や、エストロゲンとプロゲステロンの影響を受けやすい犬は、リスクが高まります。
症状と診断
1. 症状
乳腺腫瘍の症状は、腫瘍の大きさや位置、進行度によって異なります。以下のような症状が見られます。
- しこりの形成: 乳腺にしこりや腫れが見られることが多いです。しこりは硬く、痛みを伴うこともあります。
- 乳頭からの分泌物: 血液や膿が出ることがあります。
- 皮膚の変色や潰瘍: 腫瘍が大きくなると皮膚が変色したり、潰瘍ができることがあります。
2. 診断方法
乳腺腫瘍の診断には、以下のような方法が用いられます。
- 視診と触診: 乳腺のしこりや腫れを身体検査により確認します。
- 細胞診: 針を使ってしこりから細胞を採取し、顕微鏡で観察します。これにより、腫瘍かどうかを確認します。
- 生検: 腫瘍の一部を切り取り、詳しく調べる方法です。これにより、腫瘍の種類や悪性度を確定することができます。
- 画像診断: X線や超音波検査を行い、腫瘍の広がりや転移の有無を確認します。
治療法
1. 手術
最も一般的な治療法は手術です。腫瘍の大きさや位置に応じて、乳腺の一部または全体を切除します。良性腫瘍の場合、手術のみで完治することが多いです。一方、悪性腫瘍の場合は、再発や転移のリスクがあるため、追加の治療が必要になることがあります。
2. 化学療法
悪性腫瘍の場合、手術後に化学療法を行うことがあります。化学療法は、腫瘍細胞の増殖を抑える薬剤を使用する治療法です。これにより、再発や転移のリスクを減らすことができます。
予防と管理
1. 早期発見
乳腺腫瘍の早期発見が重要です。定期的な健康診断や自宅での乳腺チェックを行うことで、早期に異常を発見し、適切な治療を受けることが可能です。
2. 避妊手術
避妊手術は乳腺腫瘍の発生リスクを大幅に減少させます。特に初回の発情前に手術を行うと、リスクが大幅に低減されます。
終わりに
犬の乳腺腫瘍は、早期発見と適切な治療が鍵となります。定期的な健康診断や自宅でのチェックを怠らず、異常を感じたらすぐに動物病院を受診することが大切です。また、1歳までの避妊手術を検討することで、腫瘍の発生率を下げる一助となります。気になることがあれば、ご相談お待ちしております。