2025/02/02
こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。🌳
今回は急な行動の変化や、運動や知覚に障害の起こる肝性脳症についてご紹介します。
※肝性脳症とは…肝臓が正常に機能しなくなり、その結果として血液中に毒素(主にアンモニアなど)が蓄積され、それが脳に影響を与える病気です。この病気は、肝臓が血液中の有害物質を正常に処理できなくなることで発生します。
症状
1.神経症状
- 嗜眠(しみん)や昏睡:元気がなくなる、寝ている時間が長くなる。
- ふらつき:歩行時に足取りが不安定になる。
- 痙攣:体の一部または全身がけいれんする。
- 頭を振る、または奇妙な動き。
- 不安定な歩行:足を引きずるように歩く、足元がふらつく。
2. 行動の変化
- 食欲不振:ご飯を食べたがらない。
- 攻撃的になることがある:普段とは異なる行動を見せることがある。
- 過度に落ち着かない:急に動き回ったり、落ち着かない様子が見られる。
3. 生理的症状
- 黄疸(おうだん):皮膚や目が黄色くなる。
- 嘔吐や下痢:消化不良が見られる。
- 多飲多尿:異常に水を飲んだり、排尿を頻繁にする。
4. その他
- 呼吸の異常:深くて速い呼吸や不規則な呼吸が見られることがあります。
原因
1.慢性肝疾患
- 肝硬変:肝臓の細胞が傷つき、繊維化が進むことで、肝臓の機能が低下します。慢性的な肝疾患が原因で肝臓が十分に機能しなくなると、有害物質(特にアンモニア)の処理ができなくなります。
- 慢性肝炎:肝臓に炎症が長期間続くことにより、肝臓の機能が衰えます。
2. 肝臓の血流障害
- 肝シャント(動静脈シャント):正常な血流が肝臓を通らず、肝臓を回避して直接全身に流れてしまう血管異常です。これにより肝臓が毒素を解毒する機会を逃し、アンモニアなどの有害物質が血液中に残り、脳に影響を及ぼします。生まれつきみられる先天性や肝疾患による後天性のものがあります。
3. 肝臓の腫瘍や腫瘍性疾患
- 肝臓に腫瘍(良性または悪性)ができることがあります。腫瘍が肝臓の正常な機能を妨げ、有害物質を処理できなくなり、肝性脳症を引き起こすことがあります。
4. 肝臓の突然の損傷(急性肝不全)
- 中毒:例えば、特定の薬物や化学物質(例えば、アセトアミノフェン・カビ毒・植物など)による中毒が急性肝不全を引き起こし、肝性脳症を引き起こすことがあります。
- 感染症:肝臓が細菌やウイルスによって感染すると、急性の肝炎が起こり、肝不全に至ることがあります。
5. 脂肪肝(脂肪肝症)
- 特に肥満や栄養不良の状態で、肝臓に脂肪が過剰に蓄積することがあります。脂肪肝は肝機能の低下を引き起こし、肝性脳症の原因となることがあります。
6. 遺伝的要因
- 一部の犬種や猫種では、肝臓疾患や肝性脳症を発症しやすい遺伝的素因を持っていることがあります。例えば、ダルメシアンやシーズーなどの犬種では、肝疾患や肝機能障害が比較的よく見られます。
7. 感染症
- ウイルス感染症や細菌感染症が肝臓に影響を及ぼし、肝機能を低下させることがあります。例えば、猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)などが肝臓に関わることがあります。
8. 栄養不良
- 栄養不良(特にたんぱく質の過剰または不足)や消化不良が続くと、肝臓に負担がかかり、肝性脳症を引き起こす可能性があります。
治療
食事療法
- 低たんぱく質の食事:肝臓にかかる負担を減らすため、たんぱく質の摂取量を調整します。過剰なたんぱく質はアンモニアの生成を促進するため、低たんぱく質で消化が良い食事が推奨されます。
- 高カロリー食:肝臓が正常に機能しない場合、エネルギーを効率よく吸収することが重要です。高カロリーで栄養価の高い食事が用いられます。
- 肝臓用療法食:肝臓疾患用の特別な療法食を使用することが一般的です。これらの食事は肝臓の負担を軽減し、栄養管理をサポートします。
2. 薬物療法
- ラクトロース:ラクトロースは腸内でアンモニアの吸収を減少させ、腸内でアンモニアを吸着し、便として排出を促進します。これにより、血液中のアンモニア濃度を下げる効果があります。
- 抗生物質:腸内での有害物質(特にアンモニア)を生成する細菌の活動を抑制するために使用されることがあります。これにより、アンモニアの生成を減少させます。
- ベンゾジアゼピン系薬剤:急性の肝性脳症の場合、薬剤で意識や神経症状を管理することがありますが、これは通常、症状の緩和を目的としています。
3. 点滴療法
- 水分補充:脱水症状や電解質の不均衡が生じることが多いため、点滴による水分補充や栄養補助が行われることがあります。点滴は肝臓に負担をかけずに栄養と水分を補充できる方法です。
- 血糖管理:肝不全が進行すると血糖の調整が難しくなることがあるため、血糖値を監視し、必要に応じて補充します。
4. 肝臓保護薬
- 肝臓サポート薬:肝機能を改善し、肝臓の回復をサポートする薬剤が使用されることがあります。例えば、ウルソデオキシコール酸などは、肝細胞の修復や胆汁の流れを改善するために使われます。
- 抗酸化剤:肝臓の細胞が酸化ストレスから回復するために、抗酸化作用を持つ薬剤(例えば、サプリメントや薬剤)を使用することがあります。
5. 原因となる疾患の治療
- 肝臓疾患の根本的な治療:肝臓に腫瘍や感染症がある場合、これらの原因に対する治療(例えば、抗生物質の投与や外科的切除)が必要になることがあります。肝臓の異常血流が原因であれば、外科手術や薬物療法で改善を試みます。
6. 症状の管理とモニタリング
- 定期的な検査:治療中は定期的に血液検査や尿検査、画像診断を行い、肝機能や症状の進行具合をモニタリングします。アンモニアの濃度や肝臓の状態を確認することが重要です。
- 神経症状の管理:急性の症状が現れた場合、意識レベルや行動を注意深く観察し、必要に応じて鎮静薬や抗けいれん薬を使うことがあります。
7. 肝臓移植
- 肝臓移植は非常に稀ですが、犬や猫で肝不全が末期に進行した場合に選択肢となることがあります。これは非常に高額でリスクが伴いますが、場合によっては命を救う手段となります。
肝性脳症は早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状の改善や病気の進行を遅らせることが可能です。しかし、治療が遅れると進行して昏睡状態や生命の危険が伴うこともありますので、症状が見られた場合は早期の受診が重要です。
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