2024/10/17
みなさんこんにちは!
世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。
今回は、わんちゃんのアジソン病について紹介します。この病気は、わんちゃんでは稀な病気ですが、幼弱な子から中年齢の子まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。特異的な症状がないため、発見しづらい病気でもあります。
「最近寝てばかりいる」、「食欲が落ちてきた」など、何となく元気がない状態のときはこのアジソン病が隠れている可能性があります。ここでは、アジソン病の症状、診断、治療について詳しく説明します。
アジソン病とは
アジソン病は、正式には「副腎皮質機能低下症」と呼ばれ、副腎の機能が低下することによってホルモンが十分に分泌されなくなる病気です。副腎は、腎臓のすぐ上に位置する小さな臓器で、コルチゾールやアルドステロンといったホルモンを分泌して体内のさまざまな機能を調整しています。しかし、アジソン病のわんちゃんでは、これらのホルモンの不足が原因で、体が適切に機能しなくなります。
アジソン病の原因
アジソン病の原因は、主に以下のようなものがあります。
①免疫介在性
最も一般的な原因は、犬の免疫システムが誤って自分の副腎を攻撃してしまう自己免疫反応です。この結果、副腎が正常に機能しなくなり、必要なホルモンを分泌できなくなります。
②副腎の感染や炎症
感染症や炎症が副腎に直接影響を与えることで、アジソン病を引き起こすことがあります。副腎に腫瘍ができることもありますが、これはごく稀なケースです。
③医原性アジソン病
クッシング症候群の治療などでステロイド薬を長期間使用していた犬が、急にその投与を中止するとアジソン病を発症することがあります。これは、体が自分でコルチゾールを作る力を失った状態です。
アジソン病の症状
アジソン病の症状は初期の段階では軽度で、見逃されることも多いです。しかし、病気が進行すると次第に深刻な症状が現れます。
①食欲不振
食欲が急に落ちる、または全く食べなくなることが多いです。これはホルモンバランスの乱れによるもので、消化機能に影響を及ぼします。
②嘔吐・下痢
消化器系が影響を受けるため、嘔吐や下痢が頻繁に起こります。特に下痢は慢性化することがあり、長期間続くことがあります。
③元気がない、疲れやすい
犬が普段よりも動きたがらなくなったり、散歩中にすぐ疲れるようになったりします。アジソン病では体全体のエネルギーが不足し、疲労感が強くなります。
④体重減少
ホルモンの不足は体の代謝にも影響を与えます。そのため、食事を十分に取っていても体重が減少することがあります。
⑤脱水や低血圧
アルドステロンというホルモンが不足するため、体内の水分や電解質のバランスが崩れ、脱水や低血圧が発生します。これにより、犬が立ちくらみを起こしたり、ぐったりと動けなくなったりします。
⑥震えやふらつき
体内の電解質バランスが乱れることで、筋肉の動きにも影響が出ます。特に震えや足のふらつきが見られることがあります。
⑦アジソンクリーゼ(急性アジソン病発作)
症状が急激に悪化することがあり、これをアジソンクリーゼと呼びます。この状態になると、嘔吐、下痢、極度の脱水、ショック、意識喪失などが起こり、命に関わる緊急事態となります。この場合、直ちに治療を受ける必要があります。
診断方法
アジソン病は、症状が多岐にわたるため、診断が難しいことがあります。診断には次のような検査を行います。
①血液検査
一般的な血液検査では、アジソン病の特徴的な異常を確認できます。特に、ナトリウムとカリウムのバランスが崩れている場合、アジソン病が疑われます。また、血糖値や血液中の赤血球・白血球の異常も見られることがあります。
②ACTH刺激試験
アジソン病を確定するための最も一般的な検査がACTH刺激試験です。この検査では、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与して、副腎がどの程度コルチゾールを分泌するかを血液検査によって確認します。アジソン病の場合、コルチゾールの反応が非常に低いか、全く見られません。
③画像診断(超音波やCT)
副腎に腫瘍があるか、その他の異常がないかを確認するために、超音波検査やCTスキャンが行われることもあります。
治療方法
アジソン病の治療は、ホルモンの不足を補うための薬物療法が中心となります。治療は一生続ける必要がありますが、適切な治療を受ければ犬は通常の生活を送ることができます。
①コルチゾール補充
コルチゾールの不足を補うために、プレドニゾロンなどのステロイド薬を投与します。日常的に投与する量は少量ですが、ストレスがかかったとき(旅行、手術、激しい運動など)は、投与量を増やすことが必要です。
②アルドステロン補充
アルドステロンを補充するために、フルドロコルチゾン(鉱質コルチコイド)が処方されることがあります。この薬は体内のナトリウムとカリウムのバランスを調整し、血圧を正常に保つ役割を果たします。または、デソキシコルチコステロンピバラート(DOCP)という注射薬が月に一度のペースで投与されることもあります。
③緊急治療
アジソンクリーゼが起きた場合、緊急の治療が必要です。入院し、点滴による水分と電解質の補給、ステロイド薬の投与、ショック対策が行われます。この場合、早急な対応が命を救う鍵となります。
日常生活の管理
アジソン病のわんちゃんは、治療を受けながら健康的な生活を送ることができますが、日常の管理が重要です。特に以下のポイントに注意しましょう。
①定期的な健康チェック
治療を続けている場合でも、定期的に獣医師の診察を受け、血液検査を行って薬の投与量が適切かどうか確認することが大切です。特にナトリウムとカリウムのバランスは定期的にチェックする必要があります。
②ストレスの管理
アジソン病の犬はストレスに弱いため、急激な環境の変化や過度な運動は避けてください。また、旅行や引越しなどのストレスが予測される場合は、あらかじめ獣医師に相談し、投薬量を調整する必要があります。
③食事管理
バランスの取れた食事を心がけることで、犬の健康を維持することができます。特にナトリウムとカリウムのバランスを考慮した食事が重要です。
まとめ
アジソン病は、副腎の機能低下によってコルチゾールやアルドステロンといった重要なホルモンが不足する病気です。症状は食欲不振や嘔吐、体重減少、疲れやすさ、震えなどがあり、進行すると命に関わるアジソンクリーゼを引き起こすことがあります。早期診断が重要で、血液検査やACTH刺激試験を通じて診断が行われます。治療はホルモン補充療法が中心であり、適切な治療と管理により、わんちゃんは通常の生活を送ることが可能です。
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