けいこくの森動物病院
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猫の突然の後肢麻痺や痛み…動脈血栓かも?

こんにちは!世田谷区等々力、けいこくの森動物病院です。

猫の後ろ足が突然動かなくなったり、強い痛みを訴えている場合、重い病気が隠れていることがあります。

原因の一つとして、動脈血栓塞栓症(どうみゃくけっせんそくせんしょう)があります。

猫の動脈血栓塞栓症は、特に心臓病を患っている猫に多く見られます。動脈血栓塞栓症は、血液の塊(血栓)が動脈を塞ぎ、血流が遮断されることで起こります。この病気は、早急な対応が必要な緊急事態です。今回は、動脈血栓塞栓症の原因、症状、治療法、および予防方法について詳しく解説します。

 

1. 動脈血栓塞栓症とは?

動脈血栓塞栓症は、血液が固まってできる血栓が動脈を塞ぐことで、血流が遮断される病気です。猫の場合、この血栓は主に後肢にある動脈で発生することが多く、後肢麻痺(後ろ足が動かせなくなる症状)を引き起こします。心臓に異常がある猫では、心臓内で血栓が形成され、その血栓が体内を流れて他の部位に詰まることで、さまざまな症状を引き起こします。

 

2. 原因

動脈血栓塞栓症の主な原因は、心臓の病気です。特に、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)という心臓病が関連しています。肥大型心筋症は、心臓の筋肉が厚くなり、正常な血液の流れが妨げられる病気です。このため、血栓が心臓内で形成されるリスクが高まります。

血栓ができると、血流に乗って動脈に詰まることがあり、これが動脈血栓塞栓症を引き起こします。特に、後肢にある動脈(後大動脈)が詰まりやすく、猫は突然歩けなくなることがあります。

肥大型心筋症以外の原因

感染症腫瘍も血栓を形成しやすくすることがあります。

・血液が異常に凝固しやすい状態(血液凝固異常)も原因の一つです。

 

3. 症状

動脈血栓塞栓症の主な症状は、急に現れることが多く、次のようなものがあります。

a. 突然の後肢麻痺

猫が突然、後ろ足を引きずる、または完全に使えなくなることがあります。これは、血栓が後大動脈に詰まることで、後肢への血流が遮断されるためです。

b. 足が冷たくなる

血流が途絶えるため、足が冷たく感じられることが多いです。特に、後肢の肉球が冷たく、青白くなることがあります。

c. 痛み

詰まった動脈の先に血液が届かないため、猫は非常に強い痛みを感じます。しきりに鳴いたり、息が荒くなることがあります。

d. 呼吸困難

心臓に問題がある場合、動脈血栓塞栓症に加えて呼吸困難が見られることがあります。これは、心臓自体が正常に機能していないことに関連しています。

 

4. 診断

動脈血栓塞栓症の診断には、いくつかの方法が用いられます。

a. 身体検査

獣医師は、猫の後肢を触診し、冷たさや麻痺の程度を確認します。また、心音を聞くことで、心臓の異常を確認します。

b. 血液検査

血液検査では、血栓の原因となる疾患(心筋症や血液凝固異常)を特定するための指標が確認されます。

c. 超音波検査(エコー)

心臓の状態を詳しく調べるために、エコー検査が行われることがあります。これにより、心筋の肥厚や血栓の有無を確認します。

d. X線検査

肺や心臓の状態を確認するために、X線検査も有用です。特に、心臓肥大や肺水腫がないかを調べます。

 

5. 治療

動脈血栓塞栓症は緊急対応が必要です。治療法には次のようなものがあります。

a. 痛みの管理

まず、猫が感じる痛みを緩和するために、痛み止めが投与されます。猫は非常に強い痛みを感じるため、適切な鎮痛処置が重要です。

b. 血栓溶解剤

血栓を溶かすために、血栓溶解剤(血栓を溶かす薬)が使用されることがあります。ただし、これらの薬には副作用のリスクがあり、慎重に使用されます。

c. 抗凝固剤

新しい血栓の形成を防ぐために、抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)が使用されます。これは、今後の血栓の再発を防ぐためにも重要です。

d. 外科手術

血栓が大きい場合や、薬物療法では効果が見られない場合には、外科的に血栓を取り除く手術が検討されることもあります。ただし、手術にはリスクが伴い、特に高齢の猫や心臓病が重度の猫には慎重に行われます。

 

6. 予後

動脈血栓塞栓症の予後は、猫の全体的な健康状態や、血栓の大きさ、発生場所に依存します。治療が成功したとしても、後遺症が残ることがあり、完全に後肢の機能が回復するとは限りません。また、心臓の問題が根本にある場合、今後の再発のリスクも高いため、継続的な管理と治療が必要です。

回復後のケア

回復後も、再発を防ぐために定期的な心臓のチェックや、抗凝固剤の投与が続けられることが多いです。猫が快適に過ごせるよう、環境の整備や適切な運動、栄養管理も重要です。

7. 予防

動脈血栓塞栓症の予防には、以下のポイントが挙げられます。

a. 心臓病の早期発見

定期的な健康診断により、心臓病の早期発見が可能です。特に、肥大型心筋症の兆候が見られた場合には、早めに対策を講じることが重要です。

b. 抗凝固剤の使用

心臓病が確認された猫には、抗凝固剤の投与が予防的に行われることがあります。これにより、血栓の形成を抑えることができます。

c. ストレスの軽減

心臓病を持つ猫は、ストレスが病状を悪化させる可能性があるため、できるだけストレスの少ない環境を整えることが重要です。適切な飼育環境や、安心できる場所を提供しましょう。

 

まとめ

猫の動脈血栓塞栓症は、突然現れる深刻な病気であり、特に心臓病と関連があります。早期発見と迅速な治療が、猫の回復に大きく影響します。動脈血栓塞栓症のリスクを減らすためには、定期的な健康診断や適切な心臓病の管理が必要です。飼い主としては、猫の健康状態に敏感になり、少しでも異常を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。

 

 

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